■ 【しあわせの手紙】 「部長 」


    そのときの部長はすっごく冷たくて、いつもインテリ独特のオーラを張り巡らせてる人だった。 

    飲みに誘っても来ることは無いし、忘年会なんかでも一人で淡々と飲むようなタイプで、
    良く怒られていたこともあって俺はすごく苦手だった。 

    ある日のこと、部長の解雇を伝える社内メールが全員に届いた。 
    あのむかつく部長が居なくなる!!心の中でガッツポーズしたのは俺だけじゃなかったはずだ。 
    それから1週間後、部長の最後の出勤日。 退社のセレモニーが終わるとみんなそそくさと
    帰って行ったが 部長と俺だけは居残って仕事を片付けていた。 
  
    送別会の開催も自ら断った部長を苦々しく思っていると、珍しく専務から呼び出された。 
    しぶしぶ専務室に行くと、課長と専務が待ち構えていた。
    俺はそこで始めて課長から「部長解雇の真相」を聞いた。

    原因は俺だった。俺のミスの責任を全て部長がかぶってくれたらしい。 
    話を聞いてたまらなくなった俺は急いで部署に戻ったが、部長の姿はすでに無かった。 
    ふと自分の机の上を見ると、封の開いた買い置きのタバコ。すでに一本無くなってる。 
    横に添えられたメモにはこう書いてあった。 

    「これぐらいはいただいても良いはずだ」 
 
    俺にとっては無くなったその一本が、思い出の一本です 



日付2011-07-05 18:42:27