■ 【しあわせの手紙】 「尊い感謝の気持ち」


    小学生のとき、少し足し算、引き算の計算や、会話のテンポが少し遅いA君がいた。
    でも、絵が上手な子だった。 彼は、よく空の絵を描いた。 
    抜けるような色遣いには、子供心に驚嘆した。 

    担任のN先生は算数の時間、解けないと分かっているのに答えをその子に聞く。 」
    冷や汗をかきながら、指を使って、ええと・ええと・と答えを出そうとする姿を周りの子供は笑う。
    N先生は答えが出るまで、しつこく何度も言わせた。 
  

    私はN先生が大嫌いだった。 
    クラスもいつしか代わり、私たちが小学6年生になる前、N先生は違う学校へ転任することになったので、 
    全校集会で先生のお別れ会をやることになった。

    生徒代表でお別れの言葉を言う人が必要になった。 
    先生に一番世話をやかせたのだから、A君が言え、と言い出したお馬鹿さんがいた。
    お別れ会で一人立たされて、どもる姿を期待したのだ。 

    私は、A君の言葉を忘れない。 

    「ぼくを、普通の子と一緒に勉強させてくれて、ありがとうございました」 
    A君の感謝の言葉は10分以上にも及ぶ。 

    水彩絵の具の色の使い方を教えてくれたこと。 
    放課後つきっきりでそろばんを勉強させてくれたこと。 
    その間、おしゃべりをする子供はいませんでした。 

    N先生がぶるぶる震えながら、嗚咽をくいしばる声が、体育館に響いただけでした 。






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